『十二の真珠』は、やなせたかしの多彩な短編作品を収録した童話集であり、大人から子どもまで楽しめる内容です。
アンパンマンでおなじみのやなせたかしですが、この本では元祖『アンパンマン』や『チリンの鈴』といった独特の世界観を持つ作品も収録されています。それぞれの物語が、希望や哀愁、そして人生に対する深いメッセージを投げかけてくれます。
この記事では、収録作品の紹介とその魅力をお伝えします。
書籍紹介
概要
『十二の真珠』は、やなせたかしの短編童話の連作です。物語は、どれも幻想的でありながら、読者の心に強く訴えかける内容となっています。アンパンマンの誕生前夜とも言えるような元祖『アンパンマン』も含まれており、やなせたかし原典となる作品を一冊で楽しむことができます。
収録タイトル
――以上、十二編。
こういう人におすすめ!
『十二の真珠』は、子どもにも大人にも楽しめる物語が詰まった一冊です。特に次のような方におすすめです。
作者について
やなせたかしは、高知県出身の日本の代表的な絵本作家です。「アンパンマン」の生みの親として知られています。しかし、彼の作品は子ども向けだけではなく、人生の深いテーマを扱った大人が読んでも心に響く童話も書いています。
『十二の真珠』は、その多才な彼の一面を垣間見ることができる、貴重な一冊です。
作品紹介
バラの花とジョー
あらすじ
孤独な犬ジョーは、幼い頃からバラの花の下で遊ぶのが大好きでした。しかし、ある日ジョーは視力を失ってしまいます。それでもバラの花とのつながりは続き、見えない世界の中で、彼は新たな愛を見つけていきます。
おもな登場人物
ジョー
孤独な茶色い犬で、視力を失いながらもバラの花を愛し守り続ける。
バラの花
ジョーを見守り、彼に深い愛を注ぐ存在。
作品解説
ジョーの孤独と、彼がバラと心を通わせる様子は、読者の心を打ちます。バラの花は「愛」や「美しさ」の象徴として描かれ、愛がどのようにどう人生に影響を与えるかを考えさせる作品です。
天使チオバラニ
あらすじ
マンナカ山に住む少女ユレルは、体の真ん中にホクロが点線のように並び、まるで国境線のように体を二つに分けられていました。彼女は毎晩、ホクロが消えるように神に祈り続けていました。
おもな登場人物
ユレル
国境線のようなホクロを持つ少女。ホクロが消えることを願い、祈り続ける。
天使チオバラニ
ユレルが他者のために祈った時に現れる天使。
作品解説
ユレルの体にあるホクロが国境線を象徴し、その消失を祈る彼女の姿は、平和と共存への願いを示しています。天使チオバラニの登場は、他者のために祈ることの重要性を教えてくれる象徴的な存在として描かれている。
チリンの鈴
あらすじ
子羊のチリンは、両親をオオカミに殺され、その復讐を誓います。彼は自らを鍛え、母を殺したオオカミのウォーに弟子入りします。やがて、チリンはウォーをも超える力を手に入れるものの、その代償として彼の人生に大きな代償を支払うことになってしまいます。
おもな登場人物
チリン
両親をオオカミに殺され、復讐のために強さを求める子羊。
ウォー
最凶のオオカミであり、チリンを弟子にするが、彼の行く末に大きな影響を与える。
作品解説
『チリンの鈴』は、喪失と復讐、そして成長の物語です。母親を失った悲しみから復讐に取り憑かれたチリンが、最終的に得るものと失うものを描くことで、人生の意味や選択について問いかけてきます。
アンパンマン
あらすじ
元祖『アンパンマン』は、正義の味方として空腹の子どもたちを救うために頑張るおじさん。彼は、どんなに遠くにいる子どもでも、自分のアンパンを渡して元気づけようと、全力で飛び回ります。
おもな登場人物
アンパンマン
汗だくで飛ぶおじさん。お腹を空かせた子どものためなら世界の果てまでアンパンを渡しに行く。
作品解説
やなせたかしの考える「正義」と「飢え」のテーマが凝縮された短編童話です。戦争の中でやなせたかしが体験した「正義とは何か?」という問いが、この作品に深く根付いています。また、飢えという苦しさは耐えがたいものであり、それを救うアンパンマンの姿は、優しさと自己犠牲の象徴です。正義とは何か、そして人々を助けることの意味を問いかける作品です。
戦争で感じた大事なことがもう一つあります。それは、正義というのはあやふやなものだということです。
――やなせたかし
同著者の書籍
詳しい書籍の紹介は、こちらからお読みください。
『やなせたかし明日をひらく言葉』は、複数のエッセイから名言を抜粋した一冊です。やなせたかしの言葉を手軽に楽しみたい方には、特におすすめです。⇒詳しくはこちら
やなせたかしの弟・千尋や、父、叔父のことを知りたい人は、『やなせたかしおとうとものがたり』がおすすめです。⇒詳しくはこちら
[エッセイ]チリンとウォーの関係に見る戦争と平和の教訓―復讐は避けられたのか?−−『チリンの鈴』をオトナ読み!
感想エッセイを書きました。こちら(note)からお読みいただけます。
まとめ
『十二の真珠』は、やなせたかしの多彩な短編が詰まった珠玉の本です。対象である子どもはもちろん!大人まで、幅広い読者層に響く作品となっています。
アンパンマンを知る世代にとっては、元祖アンパンマンを含むこの作品集は、新しい発見の場ともなるでしょう。
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