『やなせたかし おとうとものがたり』は、アンパンマンの作者として知られるやなせたかしが、若くして戦死した弟・千尋との思い出を詩と絵で綴った詩画集です。
この詩集は、戦争によって弟を失った悲しみや、弟への複雑な思いを詠んだ作品で、やなせたかしの想いが詰まっています。
戦争体験や家族の絆について知りたい人、読書感想文の題材を探している人にぴったりの一冊です。
書籍紹介
やなせたかしは、22歳で戦死した弟・千尋への思いを込めて『おとうとものがたり』を書きました。この作品は、彼にとって個人的なレクイエムとして綴られたもので、最初は世間に発表する予定はなかったそうです。しかし、人から強く勧められたので、詩集としてフレーベル館から刊行されました。
こういう人におすすめ!
やなせたかしについて
やなせたかしは、1919年に高知県で生まれ、アンパンマンの作者として日本中にその名を知られています。詩人や絵本作家、作詞家としても活躍し、「手のひらを太陽に」や「アンパンマンのマーチ」など多くの名曲を生み出しました。
彼の作品は、弟や家族への思い、戦争体験など、個人的な感情が反映されたものが多く、その深いメッセージが読者の心を打つものとなっています。
作品解説
弟・千尋は特攻隊で戦死したのではない
やなせたかしの弟・千尋は、ネット上では「特攻隊で戦死した」と語られることがありますが、これは誤りです。実際には、海軍の特別任務に就き、フィリピン沖のバシー海峡で乗っていた船が敵の攻撃を受け、沈没して亡くなりました。
この事は、『おとうとものがたり』巻末エッセイでも語られていますし、もう少し詳しいことは『ぼくは戦争は大きらい』の中でやなせたかしが語っています。
※やなせたかしは弟の死を直接見たわけではありませんので、多少の誤認はあったかも知れません。ですが、「弟が特攻隊で亡くなったというのが間違え」であることは確かのようです。この記事では、あくまでやなせたかしの本の内容をご紹介させて頂いています。「歴史の観点」から書いたものではありませんのであしからず。
千尋は特殊潜航艇の乗組員としてフィリピン沖バシー海峡の海底に沈み、遺骨も何もなく、骨壺の中には海軍中尉柳瀬千尋と書いた木札が一枚だけだった。
――やなせたかし
引用元:52ページより
亡くなってから刊行された本
やなせたかしは2013年10月に94歳で亡くなっていますが、この本が発行されたのは2014年9月です。この作品は、2011年9月にやなせが執筆した未発表の原稿でした。
刊行までに3年の時間がかかっている理由は明らかではありませんが、”僕の個人的な感情にすぎないから(48頁より)”と、世に出すつもりがなかった作品ということを、巻末のエッセイで書かれています。
もしかすると、やなせたかし自身が、自分の死後に刊行してほしいという希望を出していたのかもしれませんね(※あくまで憶測です)。
レクイエムとして
『おとうとものがたり』は、“弟よ、君の青春はいったい何だったのだろう(4頁より)”という強烈な問いかけから始まります。やなせたかしの内に秘めた深い感情が、作品全体を通して静かに浮かび上がり、弟を失った悲しみと無念さが、詩的な表現の中に色濃く反映されています。
戦争に翻弄され、短い生涯を終えた弟への追悼の気持ちが、読み手に強く響く一冊です。
朝ドラ情報
2025年春、NHK朝の連続テレビ小説『あんぱん』が放送予定です。このドラマは、アンパンマンの生みの親であるやなせたかしさんと、彼の妻・小松さんをモデルにした感動的な物語です。ヒロイン・朝田のぶ役を今田美桜さんが、やなせたかしをモデルにした柳井嵩役を北村匠海さんが演じます。
物語は柳井嵩(やなせたかし)のお父さんがすでに亡くなっているところから始まります。この『おとうとものがたり』もお父さんが亡くなったところから始まることを考えると朝ドラでは、この書籍とリンクしていることが考えられます。ちなみにお父さん役は、初めての朝ドラ出演になる二宮和也さんです。
同著者の書籍
詳しい書籍の紹介は、こちらからお読みください。
『やなせたかし明日をひらく言葉』は、複数のエッセイから名言を抜粋した一冊です。やなせたかしの言葉を手軽に楽しみたい方には、特におすすめです。⇒詳しくはこちら
[エッセイ]きょうだいという鏡に映る自分−−『やなせたかしおとうとものがたり』を読んで
感想エッセイを書きました。こちら(note)からお読みいただけます。
まとめ
やなせたかしが亡くなってから約1年後に刊行されたのは、本人の「気恥ずかしさ」もあるのかもしれませんね。もちろん、その想いには色々な気持ちが含まれていると思います。
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