「消えた」のではない――一瞬で“消された”家族。
写真の中で笑っていた家族が、ある朝を境にこの世から消された。
『ヒロシマ 消えたかぞく』は、原爆で一家全員を失った広島の理髪店主・鈴木六郎さん一家の記録を、残された家族写真と共にたどる写真絵本です。
なぜ、あの笑顔が奪われなければならなかったのか。
“カタキとってね”――9歳の少女が残したその言葉は、戦争が子どもの心にまで深く入り込んでいたことを示しています。
日常、家族、命、そして笑顔が一瞬で失われる恐ろしさ。
この絵本は、それを静かに、しかし確かに伝えてくれます。
第66回青少年読書感想文全国コンクール小学高学年の部(2020)の課題図書にも選ばれた本作は、子どもから大人まで、すべての世代に“戦争の現実”と“平和の尊さ”を伝える一冊。
今こそ、読んでほしい記録がここにあります。
作品紹介
あらすじ
1945年8月6日の原爆で一家全員を失った、理髪店主・鈴木六郎さん一家の記録です。六郎さんが趣味で撮りためた家族写真には、戦時中でも笑顔で暮らす家族の姿が残されています。
遺された写真とともに描かれる日常と悲劇が、原爆の残酷さと平和の尊さを静かに訴えかける写真絵本です。
おもな登場人物
鈴木 六郎(すずき ろくろう)
享年43歳。広島市内で散髪屋を営む一家の父。写真が趣味で、家族との日々をたくさん撮影していた。原爆によって重傷を負い、救護所で亡くなった。
鈴木 フジエ(すずき ふじえ)
享年33歳。六郎の妻で、4人の子どもを育てる母。家族全員を失った悲しみから、井戸に身を投げて命を絶った。
鈴木 英昭(すずき ひであき)
享年12歳。長男。原爆投下時、小学校で被爆。妹の公子を背負って避難し、自らも数日後に亡くなる。
鈴木 公子(すずき きみこ)
享年9歳。長女。英昭とともに小学校で被爆し、兄に背負われて避難。治療所に預けられた後、行方がわからなくなった。
鈴木 護(すずき まもる)
享年3歳。次男。自宅で被爆し、焼け跡から白骨で発見された。
鈴木 昭子(すずき あきこ)
享年1歳。次女。護とともに自宅で亡くなり、白骨遺体として見つかった。
こんな人におすすめ
本作は、以下のような方に特におすすめです。
- 子どもに平和を教えたい保護者・教育関係者:小学生から読める絵本形式で、重いテーマを伝えるのに適しています。
- ノンフィクション作品が好きな人:実際の写真と証言に基づいた、事実に根ざした物語です。
- 家族や命の大切さを見つめたい人:何気ない日常が失われた事実を通じて、生きることの尊さを考えるきっかけになります。
- 歴史を写真から感じ取りたい人:戦前の家族写真が豊富に掲載されており、当時の生活が視覚的に伝わってきます。
- 読書感想文の課題図書を探している小中学生・保護者:第66回青少年読書感想文全国コンクール(2020)の課題図書にも選ばれた信頼ある一冊です
著者について
指田 和(さしだ・かず)1967年、埼玉県生まれ。「命」「自然」をテーマにした絵本や児童書の制作を行っている。主な作品に『ヒロシマのピアノ』、『あの日をわすれない はるかのひまわり』などがある。
作品解説
六郎さん一家の記録
広島で暮らした理髪店一家
本書は、広島市中心部で理髪店「鈴木美髪院」を営んでいた鈴木六郎さん一家6人の記録です。1945年8月6日の原爆投下によって家族全員が犠牲となりました。
六郎さんは写真が趣味で、生前に家族の姿を多く記録していました。そのアルバムは親族である鈴木恒昭(つねあき)さんの家で保管されていました。後に原爆資料館へ寄贈され展示されたのがキッカケで絵本になりました。またこの一家の詳細を知ることができたのも恒昭さんのおかげです。
家族写真が残したもの
六郎さん一家のアルバムには日常の風景、子どもの成長記録、家族のふれあいなどが写されています。写真は、戦時中の家庭生活を視覚的に伝える貴重な資料です。
写真には、家族の笑顔ばかりが残されており、当時の市民生活がただ苦しみに満ちたものでなかったことを物語っています。
「カタキとってね」―戦時下の教育が残した言葉
「カタキとってね」とは何だったのか
被爆直後、9歳の公子ちゃんが、兄の英昭くんに「おにいちゃん、このカタキ、ぜったいにとってね」と言い残したという一文があります。
この言葉については、刊行後に「本当に9歳の子どもがそんな言葉を言ったのか?」という疑問の声が著者のもとに寄せられました。年齢に対して内容が重すぎるという印象を持つ読者も少なくありません。
「公子ちゃんが最期に言った<カタキとってね>という言葉が信じられません。まだこんなにおさない子が、死ぬ間際にそんな言葉を言うでしょうか?」という、六十代の人からの手紙でした。
引用元:「ヒロシマ消えたかぞく」のあしあと77ページ
戦時下の教育と社会背景
子どもに浸透していた戦争思想
当時の日本では、戦争を肯定する教育が小学校でも日常的に行われていました。敵への憎しみや報復の正当性が、教科書や授業、行事などを通じて繰り返し伝えられており、子どもたちもそれを自然に受け入れていました。
言葉の背景にある価値観
「カタキをとる」という言葉は、特異なものではなく、当時の子どもたちにとっても違和感のない表現でした。公子ちゃんの発言は、戦争が子どもにまで深く入り込んでいた現実を示しています。
写真から伝わるもの
家族の笑顔に残された記憶
写真に映る六郎さん一家は、皆が笑顔で過ごしています。長男・英昭くんや長女・公子ちゃんが幼い姿で写っていること、そして末の昭子ちゃんの写真が残されていないことから、写真の多くは原爆投下の2年以上前に撮影されたと考えられます。(*戦争が激しくなるにつれ、「ぜいたくは敵だ」という風潮が広まり、カメラも報道などの特別な目的以外では使われにくくなっていた。)
ですが戦況が悪化する中でも、この家族には笑顔が絶えることはなかったことが恒昭さんの証言からわかります。写真は、当時の平凡で温かな日常が確かに存在していたことを静かに物語っています。
写真に残る動物たちの姿
一家は動物好きで、写真には飼いイヌやネコと過ごす場面が数多く見られます。刊行後、読者から「このペットたちはどうなったのか」という質問が寄せられたのだそうです。
爆心地から約500メートル以内にあった一郎さん宅周辺にいたのであれば、人間と同様、ペットたちも原爆の犠牲となったと考えられます。
わたしのもとにとどいた読者からの手紙の中には、「原爆でペットたちはどうなってしまったのでしょうか?」という声もありました。
引用元:「ヒロシマ消えたかぞく」のあしあと112ページ
『はだしのゲン』に描かれる動物の悲劇
漫画『はだしのゲン』にも、原爆投下後、炎に包まれた馬が暴れ回る描写があります。このように、原爆の被害は人間に限らず、動物たちにも及んでいたことがわかります。
「うわーーっ 馬に火がついて あばれている」
――中岡ゲン
すべての「生」が奪われた
原爆は、人間だけでなく、動物、植物、街全体の「生」を一瞬で破壊しました。写真に写っているのは、かつて確かに存在していた命なのです。
関連リンク
書籍詳細ページ
リンク先で書籍に関する基本情報をご確認いただけます。
- 定価:1,815円
- サイズ:A4変型判(226mm x 225mm)
- ページ数:41頁
- 初版発行:2019年7月
- 出版社:ポプラ社
- 対象年齢:小3~
「ヒロシマ消えたかぞく」のあしあと
『「ヒロシマ消えたかぞく」のあしあと』は、『ヒロシマ 消えたかぞく』の制作過程を記録した著者・指田和の活動記録です。絵本制作に至るまでの想いや、関係者との出会い、刊行後の反響、絵本に書かれなかった事などが記されています。あくまで著者視点の記録であるため、必読ではありません。
理解を深めるための資料
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鈴木恒昭さんの証言ビデオ[ YouTube]
*16:30頃からが六郎さん一家についての証言
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