2015年に逝去した日本を代表する漫画家・水木しげるの生誕88年を記念した書籍『屁のような人生』は、その壮絶でユーモアに満ちた人生をまとめた一冊です。本書は、彼の代表作だけでなく、家族や関係者の証言、貴重な写真や絵も収録しており、従軍体験や漫画家としての歩みを時系列に紹介。水木しげるを深く知るための決定版とも言える本作の魅力を、この記事で詳しくご紹介します。
書籍紹介
書籍概要
『屁のような人生』は、2015年12月26日に水木しげるの逝去に伴い、追悼本として普及版が発刊されました。この書籍は元々、水木しげるの米寿を記念して2009年12月に限定版として発行されたものを基にしており、内容は限定版と同一です。水木しげるの少年時代から従軍経験、復員後の漫画家としての軌跡、さらには妖怪とともに歩んだ彼の人生が時系列に沿って収録されています。また、身内や関係者の証言を交えて、水木しげるの作品とその時代を網羅しています。
目次
- 第1章:テーノーと呼ばれて―落第生の頃
- 第2章:軍隊はコッケイなところだった―二等兵の頃
- 第3章:金がないから散歩ばかりしていた―紙芝居の頃
- 第4章:ふくふくまんじゅうが生き甲斐だった―貸本漫画の頃
- 第5章:奇妙な人がやけに多かった―「ガロ」の頃
- 第6章:妖怪イソガシに追い回されて―「マガジン」「サンデー」の頃
- 第7章:漫画はオモチロくなければイカン―青年漫画の頃
- 第8章:妖怪サンに描かされているんです―画業六十年をこえて
- 第9章:お化けを追いかけてシアワセになった―「怪‐KWAI‐」とともに
- 第10章:幸福は八十を過ぎてからです―家族とともに、妖怪とともに
こんな人におすすめ
- 水木しげるに興味がある方:水木しげるファンはもちろん、彼の代表作「ゲゲゲの鬼太郎」や「悪魔くん」に親しみのある方。「ゲゲゲの謎」で水木しげるが気になった方。
- 朝ドラ「ゲゲゲの女房」を見ていた人:朝ドラを見て水木しげるに興味を持った方。
購入にあたっての注意点
- 紙媒体の本体価格:定価2,800円(税別)で販売されていました。プレミアム価格で販売されていることがあるので注意が必要です。ちなみに限定版の定価は4,700円(税別)です。
- 電子書籍の閲覧環境:美麗な水木しげるの絵を楽しむためには、タブレットなど大きなディスプレイが適しています。
著者について
水木しげる(本名:武良茂)は、1922年、鳥取県境港市に生まれました。彼は第二次世界大戦中に従軍し、ラバウルでの体験を持つ戦争経験者です。戦後は紙芝居や貸本漫画を執筆し、1964年に『ガロ』で商業誌デビュー。その後「ゲゲゲの鬼太郎」や「悪魔くん」など数々のヒット作を生み出しました。2010年には文化功労者として表彰され、2015年11月30日に93歳で亡くなりました。
書籍解説
「屁のような人生」⋯?
水木しげると言えば「屁」
水木しげるファンにとって、彼のユーモラスな一面は特に親しまれています。その中でも屁や、ねずみ男の「ビビビ」でおなじみのビンタは、多くのファンが思い浮かべるワードでしょう。
水木しげるは、自身の人生を軽妙かつ飄々とした視点で捉えており、その独特な世界観がファンの間で愛されています。この書籍にタイトルがつけられた『屁のような人生』は、まさにその彼らしいユーモアを象徴しています。
水木しげるを知るにはベスト!
『屁のような人生』は、462ページに及び、紙媒体だとまるで辞書のような分厚さです。この一冊ですべての彼の人生を語ることは不可能かもしれませんが、彼の歩んできた道をざっくりと把握するには非常に優れた作品です。
彼の少年時代や従軍時代から、貸本漫画家としての苦難の日々、そして「ゲゲゲの鬼太郎」や「悪魔くん」といった大ヒット作に至るまで、漫画家・水木しげるの全貌を知るための優れた入門書とも言えます。
長年のファンにとっては、水木しげるのエピソードや時代背景が改めて確認できる内容であり、また初めて彼に触れる読者にとっても、水木しげるのユニークな視点と独特の感性を十分に感じ取ることができる一冊です。
「屁のような人生」とは、どういう意味?
『屁のような人生』というタイトルの意味は、水木しげるが亡くなる直前に発表したエッセイ本『わたしの日々』で語られています。
彼はこの表現を通して、人生に過度な期待や絶対的な意味を求めるのは心の弱さからくるものであり、人生は儚く、あっという間に消えてしまうものだと述べています。だからこそ、その瞬間瞬間に価値を見出し、満足すべきだという考えです。つまり、高瀬舟の「足るを知る」ことと同じ考えですね。
瞬時に消えゆく屁のようなものに価値を見いだし、満足するべきなんです。
――水木しげる
引用元:『わたしの日々』136ページより
88年間を凝縮
当時を振り返る身内の証言
本書の中には、水木しげるの家族や親しい関係者が寄稿したエッセイ「あの頃の水木しげる」も収録されています。家族ならではの視点で、水木しげるの人となりや、彼の人生に対する考え方、日々のエピソードが語られており、彼のユーモラスで自由奔放な一面が浮き彫りにされています。
身内の証言を読むことで、漫画家としての公の顔だけでなく、家庭での彼の姿や、家族との関係性についても垣間見ることができるのは、この書籍ならではの魅力です。
執筆者一覧
- 武良宗平(実兄)
- 武良幸夫(実弟)
- 武良布枝(水木しげる夫人)
- 桜井昌一(出版社社長。“メガネ出っ歯”のモデル)
- 村澤昌夫(水木プロダクションチーフアシスタント)
- 荒俣宏
- 京極夏彦
- 水木えつこ(次女)
当時の写真や水木しげるの絵
本書には、文字だけでなく水木しげるの当時の写真や、彼が描いた作品のイラストも豊富に掲載されています。少年時代に描いた創作童話絵本や、戦時中の貴重なスケッチ、そして彼の代表作などの絵を通じて、水木しげるの画力の高さや、独特の表現力を堪能できます。
特に、戦地で描かれたスケッチや、漫画家としての成功を収めるまでの貴重な作品は、彼の創作にかける情熱と忍耐を感じさせるものばかりで、ファンにとっても見逃せない内容です。
時系列で紹介される作品
本書には、貸本漫画時代から、商業誌デビュー後の代表作、そして晩年の作品まで、16の代表作が収録されています。それぞれの時代を象徴する作品を時系列に追って紹介しており、彼の創作活動の変遷をたどることができます。彼がどのようにして「妖怪の世界」を描き始めたのか、そしてそれがどのように進化していったのかが、一連の作品を通じて理解できます。
収録リスト
- 幽霊一家 墓場の鬼太郎
- 悪魔くん 蛙男の謎
- 河童の三平(抄)
- 鬼軍曹
- 鬼軍曹 ちょいとスリル
- 丸い輪の世界
- ハト
- テレビくん
- 墓場の鬼太郎 おばけナイター
- 河童の三平 幽霊の手
- 百点鬼 魔女花子のいじわるな一針(草稿)
- 一陣の風
- イースター島奇談
- 花町ケンカ大将
- 落第王
- 余生
米寿のお祝いの一冊
『屁のような人生』は、もともと2009年に水木しげるの画業60周年と米寿を記念して限定3500部で出版された一冊です。この限定版は、画業60周年&米寿の記念パーティで参加者にお土産として配られたもので、水木しげるを祝い、彼の人生を振り返るために作られました。
特筆すべきは、この本がファン向けに販売されたというよりも、本当にお祝いの意味を込めて制作されたという点です。当時、販売に関する告知がほとんどなかったため、一部の熱心なファンのみがその存在を知っていたようです。そして、一部の図書館には本書が寄贈されていたようです(※レビューなどからの推測です)。
追悼本として販売された普及版ですが、米寿を祝う意味で手に取ってみるのも良いでしょう。もともとお祝いのために作られた作品であり、その意図を感じながら読むことができます。
書籍を購入する
この作品に興味を持った方は、こちら⇩から購入できます!
[PR]漫画全巻ドットコム [PR]総合電子書籍ストア【楽天Kobo】
[PR]楽天ブックス
本書は、水木しげるがどのように「屁のような人生」を歩んだのかを追体験できるのが最大の魅力です。妖怪好きや漫画ファンはもちろん、生き方に迷った時、肩の力を抜いて人生を考え直したい全ての人におすすめしたい一冊です。