突然訪れた“終わりの世界”に、あなたはどう立ち向かいますか？
中学生のサトルは、友人との何気ない洞窟探検中に大地震に見舞われ、気がつけば家族とも社会とも切り離された孤島にひとり。助けも通信もない極限状況。
水は？食料は？寝る場所は？
――すべてを自分の手でまかなわなければならない。文明が失われた世界で、少年は文字通り「ゼロからの生存」を始めます。
『サバイバル』は現実に起こりうる「もしも」の世界を通して、現代を生きる私たちに問いかけます。
「あなたは、電気も水もない世界で、どう生きますか？」
1970年代という、ノストラダムスの予言や『日本沈没』など、終末思想が社会に色濃く影を落としていた時代に描かれた本作には、「人間の弱さ」と「生きるための強さ」が、壮絶なまでに刻まれています。
この記事では、あらすじや見どころについて解説していきます。
どうか最後までお付き合いください。
きっと、読み終えたあなたの中で「生きること」の意味が変わっているはずです。
作品紹介
あらすじ
突然の巨大地震が世界を襲い、地形は激変。中学生のサトルは、友人との洞窟探検中に災害に巻き込まれ、ひとり小さな孤島に取り残されてしまう。過酷な環境の中で生き延びるため、知識と工夫を重ねながらサバイバル術を身につけていく。
おもな登場人物
サトル（少年）
中学生の少年。地震で文明が崩壊した世界に放り出されるが、自力で生き延びる。
アキコ（娘）
サトルが震災後に初めて出会った女性。一時は共に暮らすが、過酷な生活に心身ともに追い詰められていく。
書籍情報（巻数・出版社）
●巻数表記は、Kindle版や文庫版など、入手しやすい流通形態を基準としています。
こんな人におすすめ
本作は、以下のような方に特におすすめです。
- サバイバルものが好きな人:極限状態での生存術や知恵が丁寧に描かれており、読みごたえがあります。
- 終末系の物語に興味がある人:文明崩壊後の世界で孤独に立ち向かう主人公の姿が印象的です。
- 実際に災害が起きた時の備えを考えたい人:食料調達や住居の確保など、現実に応用できそうな知識が学べます。
- 70年代の社会背景や空気感に興味がある人:ノストラダムスや『日本沈没』が話題となった時代の不安が色濃く反映されています。
- 心理描写のある人間ドラマを読みたい人:自然との戦いだけでなく、人間同士の衝突や葛藤も丁寧に描かれます。
- 古典的な漫画表現に触れたい人:さいとう・たかをによる緻密な作画と構成は、今なお評価されています。
- 長編漫画をまとめて読みたい人:完結済みかつ10巻以上あり、一気読みで深く物語に浸れます。
著者について
さいとう・たかを。1936年、和歌山県に生まれ、1955年に『空気男爵』でデビュー。1960年には自身の制作会社「さいとう・プロダクション」を設立し、脚本と作画の分業体制を導入するなど、業界の新しい仕組みを築きました。代表作『ゴルゴ13』は1968年から連載が続く長寿作品で、現実の国際情勢を取り入れた内容が高く評価され、単行本は200巻を超えギネス世界記録にも認定されています。2021年に逝去。
作品解説
70年代に描かれた「終末サバイバル」――その背景と魅力に迫る
社会不安と終末思想が色濃い1970年代
本作が発表された1976年～1980年は、まだ東日本大震災も阪神大震災も起きていない時代です。
しかし当時から、人々の心には大きな災害や世界の終わりへの不安が渦巻いていました。1970年代は、ベトナム戦争、国内ではよど号ハイジャック事件や三島由紀夫の割腹自殺といった衝撃的な出来事が相次ぎ、未来への不安が高まっていた時代でした。
ノストラダムスと「日本沈没」
1973年にはノストラダムスの予言詩が日本で出版され、1999年に「恐怖の大王が降ってくる」というフレーズが話題を呼びました。
同年には小松左京『日本沈没』もベストセラーに。本作は、そうした終末ブームの延長線上にある作品といえます。
内容と見どころ：極限状態での人間の姿
文明崩壊後のサバイバル描写
突然の地殻変動によって文明社会が崩壊し、孤島に取り残された少年が生き延びるために試行錯誤する姿が描かれます。食料調達、住居づくり、道具の自作など、現代人が失いつつある「生きる力」を問う内容です。
自然との闘いから人間との対立へ
物語の前半は自然災害と孤独との戦いが中心ですが、途中からは人との出会いや対立も描かれ、人間社会の縮図のような展開へと移行します。
特に、ヒロインの死（3巻途中）以降は、他者との衝突や価値観の違いが前面に出てきます。
読者が体感する「もしもの未来」
気候変動、食料難、孤独、生死の選択――それらを追体験するようなリアルな描写は、現代にも通じるテーマです。災害大国・日本に暮らす私たちにとって、決して絵空事ではないため今読むと他人事では無いように思えます。
番外編『Another story』の位置づけと評価
本編とのつながりが薄い「Another story」
『Another story』（11巻）は、もともと8巻の途中に掲載されていた雑誌連載時のエピソードです。本編の一部ではありますが、それまでの流れとは雰囲気が異なるため、単行本化の際に省かれ、後に番外編としてまとめられました。
読者の反応はさまざま
本編とのつながりが弱く、内容もやや異質なため、「なくてもよかった」と感じる読者もいます。購入されるなら本編だけど、全くの別物として読むのをおすすめします。
関連リンク
書籍詳細ページ
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