この記事は、恐怖漫画の巨匠である楳図かずおの初期短編作品集『イアラ短編シリーズ』と『イアラ』を紹介しています。
ハッピーエンドの物語から恐怖で終わる恋愛物語まで多様な男女の愛の形を楳図かずおタッチで描かれた短編作品群です。
ネタバレが含まれています。未読の人はご注意ください。
書籍紹介
概要
この書籍は、楳図かずおの短編作品が収録されています。『イアラ短編シリーズ』というタイトルですが、『イアラ』の短編連作は収録されていません。
『イアラ』に収録された作品は、大まかに、二つに分類されます。(中略)本来なら『楳図かずお短編集』と『イアラ』に別れるべきですが、とりあえず『イアラ』と題してまとめることになりました。
ーー楳図かずお
引用元:イアラ(1)異色短編傑作選233ページより
とりあえずで、まとめられた名前が何十年もそのまま使われているようです(笑)。
収録されている作品は、読み切りの短編ですので、どの巻から買っても問題はありません。
収録タイトル
1巻・愛の奇蹟
- ねじれた空間
- 愛の奇蹟
- 雪の人
- 烈願鬼
- 洞
- きずな
- Smile
2巻・ドアのむこう
- 傷
- ほくろ
- 耳
- ドアのむこう
- 砂
- 衣
- 螺旋階段
- 夏の終わり
- 目
- こがらし
3巻・内なる仮面
- 一つの石
- 宿
- 蟲たちの家
- くさり
- 南へ
- 指輪
- 内なる仮面
- 森の唄
- いろ
- ロウソク
- 波打ち際の女
作品紹介
あらすじ
愛の奇蹟
幸せな若い夫婦がいました。ある日、夫は登山に出かけましたが、山で滑落し、帰らぬ人となりました。しかし、妻は夫が戻ってくると信じ、長い間待ち続けました。
そんなある日、山の雪の中から夫の凍った遺体が見つかります。驚くことに、夫は息を吹き返しますが記憶を失っていました。「帰らなくては」という思いだけで家にたどり着きます。
ドアのむこう
狂おしいほどに夫を愛する妻は夫に強い猜疑心を抱いていました。ある日、妻はついに夫を尾行することを決意しました。会社帰りの夫を尾行すると、夫は見知らぬ家に向かいました。妻はその家の前で夫を背後から刺してしまいます。
しかし、翌朝、刺し殺したはずの夫は生きていました。その後、妻は心臓の病にかかり、嫉妬心も嘘のように消えていきました。病を機に、夫婦は新しい家へと移り住みました。
時が過ぎ、妻は満ち足りた生活を送っていたある日、夫の帰宅を待つ妻が突然激しい心臓の発作に襲われます。その瞬間、妻は真実に気づいたのです。
蟲たちの家
男は不倫相手の羽奈子に、自分が既婚者であることを打ち明けました。その告白に驚いた羽奈子に男はさらに「妻は、今はもう人間ではない」と告白しました。彼は、妻に会わせるため羽奈子を自宅へと案内しました。
しかし、自宅はクモの巣だらけで、荒れ果てた状態でした。男が語るところによれば、ある日、妻が他の男と密会している光景を目撃し、驚きのあまり妻がクモの姿に変えてしまったというのです。
よりぬき版
概要
『イアラ短編シリーズ』から選び抜かれた作品集です。ただ、こちらには、短編シリーズには未掲載だった「首」が収録されています。
収録タイトル
- 蟲たちの家
- 目
- ロウソク
- きずな
- 螺旋階段
- 首
- 夏の終わり
イアラ
あらすじ
聖武天皇が世の平安を願って行った大事業“大仏建立”の裏には、若い男女の哀しい物語がありました。天平の昔、奴婢の娘・小菜女と恋に落ちた土麻呂は、大仏建立のために都へ狩り出されます。彼に逢いたい一心で都まで歩いてきた小菜女は力尽き、倒れてしまいます。彼女を救ったのは、建立の指揮官でした。
小菜女は“たましい”として生きたまま大仏の胎内に溶かされ、土麻呂は永遠の時を生きる運命を背負います。小菜女が死ぬ瞬間に叫んだ「イアラ」という言葉、その意味を土麻呂は追い求め続けます。
注意点
第1章から第6章までが『イアラ』本編です。しかし、本来は最終章として『終焉』があるはずですが、この書籍には収録されていません。未完結の状態ですが、短編連作形式なので意味が分からなくなることはありません。
収録タイトル
- 第1章/さなめ
- 第2章/しるし
- 第3章/わび
- 第4章/かげろう
- 第5章/うつろい
- 第6章/望郷
- ねむり
- 雪の夜の童話
- 指
まとめ
楳図かずお初心者には『イアラ短編シリーズ』がおすすめです。よりぬき版でも良いですが、後で他の話を読む際に重複してしまうのが勿体ないですからね。短編シリーズから気になるタイトルを選んで購入するのが良いですよ!ちなみに『蟲たちの家』は、世にも奇妙な物語で映像化されていました。
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