この記事は、山岸凉子による『わたしの人形は良い人形』の紹介をしています。
少女漫画でも、特に怖い漫画だと有名な作品です。なんたって「市松人形」×「子どもの怨念」という組み合わせですからね!トラウマ級の恐怖を体験できます。
※今回は、物語の主要な内容をがっつり書いています。ネタバレにご注意ください。
作品紹介
あらすじ
この作品は、時代が3つにわかれています。
❶主人公の母の幼少期(昭和21年)
主人公の母の姉(野本初子)が事故で亡くなった。隣に住んでいた女の子(竹内千恵子)の母は、初子と親しかった娘があの世に連れて行かれないよう、立派な日本人形をお棺に入れるよう野本家に頼みます。
しかし、野本家の祖母(主人公にとっては、曾祖母)の独断で人形は入れられず、千恵子は事故で亡くなってしまいます。その後、竹内家は引っ越し、人形は祖母が誰にも見つからないよう隠してしまいます。
❷10年後(昭和31年)
野本家の祖母が亡くなり、隠されていた人形が見つかります。それからしばらくして、主人公の母(野本姿子)の両親が事故で亡くなってしまいました。姿子は家を離れ、親戚の家を転々とすることになってしまいます。
❸さらに30年後(昭和60年)
主人公の野本陽子が高校生になり、家族全員で野本家の土地に戻ってきます。引っ越しの際に紛失していたと思われていた人形が見つかり、それ以降、陽子は人形に命を狙われることに・・・
登場人物
野本陽子
主人公。高校生になったばかりの普通の女の子。
野本姿子
主人公の母親。唯一、人形の被害に遭っていない。理由は、彼女の性格や、周囲の環境などが影響している。
野本初子
姿子の姉。交通事故で亡くなってしまう。
竹内千恵子
初子・姿子姉妹の幼なじみ。野本家の隣家の女の子。初子の死後、川に引っ張られて亡くなってしまう。
竹内陽(ミナミ)
主人公と同級生の男子高校生。主人公いわく「きれいだけど不気味な」人物。血のつながりはないが、竹内家の縁者。強い霊感の持ち主。
この漫画の怖いところ
最恐の市松人形
3つの時代を通して中心にあるのは「立派な市松人形」。市松人形と聞いただけでも怖いですよね。
この漫画では、市松人形が動いて襲ってくるんです。それも速いスピードで。そのシーンが描かてているコマの恐怖と言ったらトラウマ級です。
人形にとり憑く子どもの怨念
「人形にとり憑いているのは その二人であって もはやその二人ではないんだ(中略)与えられる物を与えられなかった子供の恨み・・・怨念でしかないんだよ」
引用元:あすかコミックス版93ページより
市松人形は、本来なら最初に亡くなった野本初子の副葬品でした。そして、初子が死ななければ竹本千恵子が人形の持ち主になるはずだった。そんな二人が人形にとり憑いています。
野本家の祖母が欲を出してしまったがゆえの悲劇。時代も戦後で、なにもない時代です。それもあり、二人の執着心は特に強かったのでしょう。その執着心が「怨念」となってしまった。
「怨念」だから、初子は自分の両親を呪い殺している。そこに「感情」というものはない。
そもそも子どもというのは、自分の気持ちを優先し、他人のことを考えられない部分がある。わがままを通す。純粋で何も知らない子どもだからこそ、残酷で最悪なシナリオを起こしてしまう。
そんな子どもの魂が、市松人形に二人もとり憑いていると思うと、なんとも怖ろしく、悲しい気持ちになりますね。
まとめ
山岸凉子作品には、数多くの傑作ホラー漫画があります。興味がありましたら、ぜひ他の作品も読んでみてください!おすすめは『ゆうれい談』『汐の声』『艮(うしとら)』『押し入れ』など。