この記事は、諸星大二郎の『稗田のモノ語り 魔障ヶ岳 妖怪ハンター』を紹介しています。
ある古代遺跡を舞台に、人々が巻き込まれる怪異の物語です。名前を付けることで変化する「モノ」との対峙を通じて、登場人物たちの運命が交錯していきます・・・。シリーズものですが、この一冊だけで十分に楽しめます!入門書としてもおすすめです。
※ネタバレを含んでいます。未読の人はご注意ください。
作品紹介
あらすじ
稗田礼二郎は、「天狗の秘所」と呼ばれる古代遺跡の調査のため魔障ヶ岳へ向かう。しかし、調査中に次々と起こる怪異に巻き込まれ、伝説の「天狗の宝器」を巡る謎が深まっていく。稗田は、名前も形もない「モノ」を鎮めることができるのか?
おもな登場人物
稗田礼二郎
主人公。日本中の奇怪な事件を研究する異端の考古学者。黒い長髪と黒ずくめの服装が特徴で、「妖怪ハンター」として知られている。
赤井貴信
稗田の後輩の考古学者。邪馬台国の発見を夢見ている。稗田と共に魔障ヶ岳を調査中、「モノ」と遭遇し、それに「魔」という名を与えた。
「魔」
赤井によって名付けられた「モノ」。赤井の助手「黒田」に成りすまし、赤井の発掘が成功するように捏造を行う。
信田昭一
修験オタクの中年男性。稗田らを魔障ヶ岳の遺跡へ道案内した際に「モノ」と遭遇し、「神」という名を与える。そのことで不思議な力を手に入れるが・・・。
岩淵翔子
旧家の末裔である若い女性。魔障ヶ岳で稗田と赤井に同行し、「モノ」に死んだ恋人の名を与える。しかし、「モノ」は自身の存在に疑念を抱いて翔子の前から姿を消してしまう。
作品解説
物語の構成とテーマ
この作品はオムニバス形式で、山に潜む「モノ」にそれぞれの名前を付けた者達の数奇な運命を描いています。
魔障ヶ岳の遺跡と「モノ」
名前を付けるという行為の意味
名前も形もない「モノ」に名前を付けることで、その存在が確定する。
邪馬台国の発見を夢見る考古学者赤井は「魔」と名付け、修験オタクの信田は「神」、恋人を失った翔子は「死んだ恋人の名前」を付けた。名前をもらった「モノ」は、それぞれの存在として役割を果たすことになります。
名前の力と物語の展開
名前を付けることで「モノ」はその通りに変化します。名前のない「モノ」は名前を欲しがり、その欲望は執念深い。一人、名前を付けない稗田に対しては何度も名づけるように迫ってきます。
ロマンあふれる歴史旅
作中には『日本書紀』や『「魏志」倭人伝』、『古事記』などの古典文献が登場します。歴史に興味がある人には特におすすめですが、詳しくなくても作中で説明がありますのでご安心ください。この作品を通じて、新たな歴史の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
『妖怪ハンター』シリーズ
この作品は、諸星大二郎の代表作「妖怪ハンター」シリーズの一つ。他にも人気作品があります。
お気に召したら是非、他シリーズ作品もお手に取ってください!
※『闇の鶯』は、単行本未収録の作品をまとめたもので、他の作品と一緒に収録されています。
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まとめ
作中には、モヒカン頭でラッパーの宗教団体の教祖・岩田狂天という面白いキャラクターが登場します。彼のファンが、なぜか多い(笑)読むとあなたも岩田のファンになるかも?