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大人向け余韻を楽しむ│諸星大二郎『瓜子姫の夜・シンデレラの朝』

こんな切ない瓜子姫は、はじめて見た
諸星大二郎が民話を素材に描くブラック・メルヘン集、『瓜子姫の夜・シンデレラの朝』。明るくも切なく、時にシュールな五つの物語。本記事では作品の見どころ、特徴を未読者向けに解説しています。

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作品紹介

あらすじ

日本の民話、西洋のメルヘン、中国の説話。妖怪と少女が夜の森へ消える話、沓(くつ)をめぐるおかしな真実。教訓もお約束の結末も、ここでは通用しない。原話の面影を残しながら、そのイメージを鮮やかに裏切る全5編。

書籍情報

●巻数表記は、Kindle版や文庫版など、入手しやすい流通形態を基準としています。

#完結済み#1巻完結#朝日新聞出版

こんな人におすすめ

本作は、以下のような方に特におすすめです。

  • 民話や昔話が好きな人:知っている話が原型をとどめないほど変容する驚きと、再解釈を楽しめます
  • 切ない読後感が好きな人:派手な盛り上がりより、静かにじんわり残る叙情と余韻を味わえます
  • 諸星大二郎を読んだことがない人:短編集のため、諸星作品への入口として読みやすい一冊です
  • 幻想的・民俗学的な世界観が好きな人:妖怪・精霊・異界など、民俗学的なモチーフを美しい画風で堪能できます
  • さらっと読めてじわじわ効く漫画を探している人:一話完結の短編集で気軽に読み始められ、読後にふと思い出す余韻が楽しめます

著者について

諸星大二郎(もろほし・だいじろう)

(1949‒)長野県生まれ。1970年にデビューし、『生物都市』で手塚賞入選。ホラーやSF、歴史、ギャグまで幅広いジャンルを手がけ、独特の作風で多くのクリエーターに影響を与えている。代表作に「妖怪ハンター」シリーズや『暗黒神話』などがあり、小説作品も執筆。数々の主要漫画賞を受賞している。

作品解説

『瓜子姫の夜・シンデレラの朝』とは│多様なブラックヘルメン

世界各地の民話を再解釈した短編集

日本・西洋・中国の民話や童話をモチーフにした全5編の短編漫画集です。作者自身が「和華蘭(わからん)」と形容するように、三つの文化圏から題材を取った多彩な構成になっています。

各話の内容と読みどころ

「瓜子姫とアマンジャク」は、妖怪の姿が見える瓜子姫がアマンジャクとともに森の精霊世界へ踏み込む物語です。巫女としての宿命と少女の意志が絡み合う、せつなくも幻想的な本書の中心的な一編です。「シンデレラの沓(くつ)」は、原話のロマンチックな展開を解体し、沓をめぐるユーモアで塗り替えた痛快な一編です。「竹青」は中国民話をベースにした変身と復讐の活劇で、異国情緒ある世界観が魅力です。

『瓜子姫の夜・シンデレラの朝』の特徴

原話を「逆手に取る」アレンジ

原話の構造を保ちながら、教訓や道徳的な結末を解体し、不条理・皮肉・余韻に置き換えます。「あのお話がこうなるのか」という驚きが各編の推進力です。

強い意志を持つ女性キャラクター

瓜子姫やシンデレラ、竹青はいずれも、宿命に抗い自ら局面を切り開く行動力を持ちます。単なるヒロイン像に収まらない造形が、本作の大きな魅力の一つです。

いま読む理由と注意点

受賞作として評価された完成度

本作は芸術選奨文部科学大臣賞(2014)を受賞しています。選考では、怪奇性と人間ドラマの両立、諸星作品における民俗・伝奇的アプローチの到達点として高く評価されました。娯楽作品としての完成度と、作家としての成熟が重なった一冊と見ることができます。

読む際に意識しておきたいこと

結末が意図的に「投げっぱなし」に近い余韻を残す話もあります。すっきりした解決を求めると物足りなく感じる場合があるため、余白を楽しむ姿勢で読むのが向いています。子ども向けの童話とは根本的に異なる、大人向けの再解釈として臨むことが作品の本来の味わいにつながります。

関連リンク

書籍詳細ページ

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