隠れ家の空気が、絵になって伝わる
原作日記の約5%のテキストとイラストで構成された『グラフィック版アンネの日記』。狭さ、息苦しさ、それでも消えない希望が、色とともに迫ってくる。本記事では作品の見どころ、特徴を未読者向けに解説しています。
作品紹介
あらすじ
1942年、ナチスの迫害を逃れたフランク一家は、「隠れ家」で8人の潜伏生活を始める。アンネは、息をひそめるような日々の中で日記を書き続けた。初恋、家族との衝突、将来の夢。少女の内側で揺れ動く感情が、ありのままの言葉で綴られていく。日記は1944年8月1日、突然終わりを告げる。
おもな登場人物
アンネ・フランク
快活で多感な作家志望の少女。架空の友人「キティー」に宛てて日記を綴る。
オットー・フランク
アンネの父。一家の支柱であり、アンネの良き理解者。戦後唯一の生存者。
エーディト・フランク
アンネの母。衝突が絶えないが、家族を支える。
マルゴー・フランク
アンネの3歳上の姉。穏やかで優等生。アンネが時に羨む存在。
ペーター・ファン・ダーン
同居するファン・ダーン家の息子。アンネと年が近く、屋根裏で語り合ううちに淡い恋が芽生える。
こんな人におすすめ
本作は、以下のような方に特におすすめです。
- 原作を読もうとして挫折した人:約150ページで核心を読み通せます。ボリュームへの不安はありません
- アンネの日記を「知っている気」で止まっている人:概要ではなく、アンネの声と感情を直接受け取る体験ができます
- ホロコーストを歴史としてしか捉えてこなかった人:一人の少女の日常と内面を通じて、人間の話として受け取り直せます
- 忙しくて長編を読む余裕がない大人:隙間時間で読み切れるボリュームで、読後の満足感はしっかりあります
- 原作を読んだことがある人:イラストによって「自分が想像していた隠れ家」が具体化され、原作とは異なる発見があります
著者について
アンネ・フランク│原作
(1929‒1945)ユダヤ系ドイツ人。ナチス占領下で隠れ家生活を送りながら日記を書き続けたが、発見・逮捕され、強制収容所に送られる。収容所内でチフスにより15歳で死去。
深町眞理子(ふかまち・まりこ)│訳
(1931‒)東京都生まれ。英米文学翻訳家。『アンネの日記』をはじめ、『アガサ・クリスティ推理・探偵小説集』『シャーロック・ホームズ(東京創元社版)』など訳書多数。
作品解説
グラフィック版アンネの日記とは│原作との違い
舞台と時代背景
1942年から1944年。ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害を逃れたフランク一家は、父の会社の裏に設けた「隠れ家」へ潜伏する少し前から描かれています。最終的に8人が潜伏し、共同生活を送ることになり、緊張状態、食料不足、外部からの脅威が続きます。
日記に描かれていること
13歳のアンネは、架空の友人「キティー」に宛てた手紙形式でその日々を綴りました。母親との衝突、ペーター少年への淡い恋心、作家になる夢。思春期の内面がありのまま記録されています。
原作との文章量の違い
本書あとがきには「原作全体の約5%のみを取り入れた」と述べています。ただし採用された文章の可能なかぎり原作からの直接引用であり、アンネの声やユーモア、感情の揺らぎは忠実に残っています。
財団公認という信頼性
本書は、アンネ・フランク財団からの発案であり、公式後援のもと制作されているため、歴史的事実や原作の精神を損なう改変はありません。
グラフィックノベルとしての特徴
イラストが補う情報
隠れ家の狭さや閉塞感、登場人物の表情や関係性など、文章だけでは想像しにくい部分がカラフルなイラストで可視化されています。
思春期描写の扱い
本作は、身体や性への好奇心など率直な描写も含まれています。財団の監修のもと、美化せずに扱われています。
脚色されている部分
隠れ家内の会話や一部のシーンには脚色が加えられています。また後半部分は、アンネの文章力の成長を尊重し、意図的にイラストをほぼ省いたテキストページとして構成されています。
大人がいま読む価値と読み方のヒント
原作を読めなかった大人へ
原作に興味を持ちながらも手が止まっている人は少なくありません。500ページ近いボリューム、繰り返しの多い日記形式、そして結末を知っているがゆえの重さ。グラフィック版はそうした障壁を取り除いた入門書として機能します。約150ページで読み通せるため、まず「一度ちゃんと読む」という体験を得るのに最適です。
初めて読む人への順番
グラフィック版で人物関係と全体の流れを掴んでから、原作の完全版へ進む順序をおすすめします。先に絵でイメージを持っておくことで、原作の長い内省や日常描写が格段に読みやすくなります。
後半は読み飛ばさないで
後半はイラストがほぼなく、テキスト中心のページが続きます。これは意図的な設計です。日記を書き始めた13歳の少女が、作家としての文章を綴る15歳へと成長していく変化を、そのまま感じれる演出です。
いま読む理由
大人として読むと、子どもでは気づけない問いが浮かびます。家族とはなにか、日常とはどれほど脆いものか。ホロコーストの記録である前に、一人の人間の声として響いてくる一冊です。
関連リンク
書籍詳細ページ
リンク先で書籍に関する基本情報をご確認いただけます。
『[グラフィック版]アンネの日記』の書籍情報
- 定価:2,750円(税込)
- ページ数:152ページ
- サイズ:25.1×17.2cm
- 初版発行:2020年5月18日
- 対象年齢:小学高学年~
- 出版社:あすなろ書房
原作
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映像化情報
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