パリへ行かなくても、パリの空気が届く
コールデコット賞を受賞したベーメルマンスの傑作絵本『マドレーヌといぬ』。大人が読むと、絵の芸術性とパリの空気感に、思いがけず心をつかまれます。本記事では作品の見どころ、特徴を未読者向けに解説しています。
作品紹介
あらすじ
パリの古い寄宿舎で、ミス・クラベル先生と暮らす12人の女の子たち。ある日、いちばん小さく、いちばんおてんばなマドレーヌは、セーヌ川沿いの散歩の途中、川へと落ちてしまいます。そのとき、どこからともなく現れた一匹の犬が、マドレーヌを助けてくれました。
おもな登場人物
マドレーヌ
12人の中で一番小さいが、一番元気でおてんばな主人公。
ジュヌビエーブ
マドレーヌを救った勇敢な犬。賢くて愛らしく、たちまちみんなの人気者。
ミス・クラベル
寄宿舎の先生。12人の女の子たちを温かく見守る。
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こんな人におすすめ
本作は、以下のような方に特におすすめです。
- パリやフランスの雰囲気が好きな人:絵の中にパリの街並みが丁寧に描かれており、ページをめくるだけでパリの空気感を味わえます
- 絵本を芸術として楽しみたい人:コールデコット賞を受賞したベーメルマンスの絵は完成度が高く、一枚の絵として鑑賞する価値があります
- 短時間で質の高い読書をしたい人:通読は3分あれば終わりますが、絵の細部まで見ていくとまた違う物語を体験できます
- 心温まる物語をさらりと読みたい人:「出会い・絆・喪失・再会」という普遍的な流れを、軽やかに描いており、読後に穏やかな余韻が残ります
- クラシックな海外絵本を一冊押さえておきたい人:1953年刊行でありながら現在も版を重ねる名作です
著者について
ルドウィッヒ・ベーメルマンス│作
(1898‒1962)オーストリア生まれ。世界中で愛される「マドレーヌ」シリーズの生みの親で、『マドレーヌといぬ』でコルデコット賞を受賞した。
瀬田貞二(せた・ていじ)│訳
(1916‒1979)東京生まれ。児童文学者。評論・創作・翻訳の三分野で幅広く活躍した。翻訳の仕事では『ナルニア国ものがたり』『指輪物語』『ホビットの冒険』など、海外ファンタジーの名作を日本に紹介した功績は大きい。評論では『絵本論』『児童文学論』など、児童文学の発展にも貢献した。
出版社について
福音館書店は1916年に創設され、1952年に児童書専門の出版社として独立しました。「こどものとも」シリーズをはじめ、絵本の質の高さにこだわり続け、国内外の優れた作品を提供しています。『ぐりとぐら』や『魔女の宅急便』『エルマー』『だるまちゃん』など長く愛される児童書を出版しています。
作品解説
『マドレーヌといぬ』とは│パリの寄宿舎生活の日常
一匹の犬が寄宿舎を変えていく
物語の舞台は、パリにある古い寄宿舎です。ミス・クラベル先生のもとで12人の女の子たちが規則正しく共同生活を送っています。女の子たちは一匹の犬と出会います。ジュヌビエーブと名付けられたその犬は賢くて愛らしく、寄宿舎の雰囲気をがらりと変えます。しかし、ある日突然その日常が崩れる出来事が起こります。
喪失と、その先にあるもの
「出会い・絆・喪失・再会」というシンプルで普遍的な構成の物語です。子ども向けの絵本でありながら、感情の起伏がしっかりと設計されており、大人が読んでも読み応えを感じられる構造になっています。
『マドレーヌといぬ』の特徴
黄色と線描の独自のビジュアル表現
ベーメルマンスの絵は、黄色を基調とした背景にモノトーンの人物を組み合わせた独特のスタイルが特徴です。セーヌ川や石造りの建物といったパリの街並みが丁寧に描かれており、絵だけでも十分な情報量を持っています。アート作品としての鑑賞にも堪える絵本です。
規則と感情の対比という構造的なテーマ
物語には制度や規則と、子どもたちの純粋な感情が衝突する場面があります。それを重く描かず、軽やかなユーモアで処理している点がこの作品の巧みさです。大人が読むと、この対比の描き方にフランスらしい精神を感じ取ることができます。
大人がこの絵本を読む価値
絵を堪能するという読み方
本作の最大の見どころは、ベーメルマンスの絵そのものです。セーヌ川、石畳、パリの建物が描かれており、ページをめくるたびにフランスの街並みが目に飛び込んできます。一枚一枚の絵をじっくり眺めるような感覚で読むと、絵本ならではのパリの空気感があります。
今この絵本を手に取る理由
何十年も読み継がれてきた背景には、絵の芸術的な完成度があります。物語はシンプルでも、絵としての密度は高く、大人が読んでも十分に足る作品です。パリの雰囲気を手軽に味わいたいとき、上質な絵を静かに眺めたいとき、そのどちらにも応えてくれる一冊です。
関連リンク
書籍詳細ページ
リンク先で書籍に関する基本情報をご確認いただけます。
『マドレーヌといぬ』の書籍情報
- 定価:1,430円(税込)
- ページ数:56ページ
- サイズ:31×23cm
- 初版発行:1973年5月10日
- 対象年齢:4歳~
- 出版社:福音館書店
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