当たり前が崩れる瞬間
天動説から地動説への移り変わりを描いた『天動説の絵本 てんがうごいていたころのはなし』は、安野光雅が手がけた科学絵本です。読むほどに、知っているつもりだったことが、少しずつ違って見えてくる不思議な一冊。本記事では作品の見どころ、特徴を未読者向けに解説しています。
作品紹介
あらすじ
「地球が宇宙の中心にある」それが疑いようのない真実だったころ。人々は平らな大地の上に丸天井が広がり、月も太陽もそこに貼りついている。それが「当たり前」だった。しかし時代が進むにつれ、人々の世界観は少しずつ揺らいでいく。
こんな人におすすめ
本作は、以下のような方に特におすすめです。
- 安野光雅が好きな人:知的好奇心を刺激する構成と静かな驚きを味わえます
- 知識と理解の違いを実感したい人:頭で知っているだけでは不十分だと気づける体験ができます
- 科学や天文学に興味がある人:天動説と地動説の捉え方を体感的に理解できます
- 思い込みや常識を見直したい人:前提が変わる驚きを通して視点の転換を味わえます
- 思考実験のような読書が好きな人:自分の認識が揺さぶられる感覚を味わえます
著者について
安野光雅(あんの・みつまさ)
(1926‐2020)島根県津和野町生まれの画家・絵本作家。1968年に絵本『ふしぎなえ』でデビューし、緻密な構成と知的な遊び心を生かした作品で高い評価を受ける。ケイト・グリーナウェイ賞特別賞や国際アンデルセン賞など、国内外で数々の賞を受賞。代表作に『旅の絵本』『10人のゆかいなひっこし』などがある。
出版社について
福音館書店は1916年に創設され、1952年に児童書専門の出版社として独立しました。「こどものとも」シリーズをはじめ、絵本の質の高さにこだわり続け、国内外の優れた作品を提供しています。『ぐりとぐら』や『魔女の宅急便』『エルマー』『だるまちゃん』など長く愛される児童書を出版しています。
作品解説
『天動説の絵本』とは│科学史の世界
物語の内容
『天動説の絵本 てんがうごいていたころのはなし』は、地球が宇宙の中心だと信じられていた中世ヨーロッパを舞台に「常識」が変化していく科学絵本です。
巻末について
巻末では、安野光雅自身が天動説を丁寧に解説しています。また西洋と日本の出来事を並行してまとめた科学史年表も収録されており、絵本本編が「感覚」で伝えるものを「知識」として補強する構成になっています。
『天動説の絵本』の特徴
一貫した神の視点による見開き構図
すべてのページが、上空から見下ろすアングルで描かれています。この視点が一貫していることで、時代の変化が「世界そのものの形が変わっていく」ように見えます。近景から徐々に遠景へと引いていく仕掛けもあり、時代が進むにつれて世界が広がっていくような感覚を視覚的に体感できます。
「知っている」と「わかっている」は違う
この絵本の大きな特徴は、読み進めるうちに、いつの間にか天動説の立場に立ってしまう点にあります。天動説を「当たり前」として受け入れながらページをめくっていくと、「地面が動いている」という発想に出会った瞬間、はっとさせられます。
大人がいま読む価値と読むポイント
現代への問いとして読む
安野光雅は古い時代を笑えない、という視点で描いています。それは、現代に生きる私たちにも向けられています。常識がいつかひっくり返るかもしれない、今「常識」と思っていることが将来の誰かには迷信に見えるかもしれない。そういった問いを物語のなかに忍ばせています。
読み方のヒント
本編は、すぐ読み終わります。ただし、読む価値は巻末にもあります。あとがきまで含めて一冊です。また、絵はじっくり眺めることをおすすめします。ひとつの見開きのなかに、複数の小さな物語が潜んでいます。科学史や哲学に関心がある人はもちろん、「わかったつもり」を問い直したい人に広くおすすめできます。
関連リンク
書籍詳細ページ
リンク先で書籍に関する基本情報をご確認いただけます。
『天動説の絵本』の書籍情報
- 定価:1,870円(税込)
- ページ数:48ページ
- サイズ:25×23cm
- 初版発行:1979年8月5日
- 対象年齢:小学中学年~
- 出版社:福音館書店
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