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異国で生きる父親の物語│『アライバル』が静かに伝える移民の現実

故郷を離れ、家族を残すということ
スーツケース一つで見知らぬ土地へ渡った男を描く絵本、ショーン・タンの『アライバル』。言葉も文字も通じない孤独を、この本は文字なしで伝えてきます。本記事では作品の見どころ、特徴を未読者向けに解説しています。

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作品紹介

アライバル Paperback Edition

アライバル Paperback Edition

  • 作者:ショーン・タン
  • 河出書房新社
Amazon

あらすじ

言葉も文字も通じない。見知らぬ生き物が空を飛び、巨大な建物が立ち並ぶ異国。スーツケース一つで降り立った男を待っていたのは、孤独と、途方もない日常だった。家族のために生き抜こうとする一人の男の、静かで切実な記録。

おもな登場人物

家族を残して異国へ渡った父親。言葉も文化も持たない「新参者」として、一から生活を築いていく。

#アングレーム国際漫画祭

こんな人におすすめ

本作は、以下のような方に特におすすめです。

  • 移民・難民問題に関心がある人:当事者の視点に近い感覚を、解説や統計ではなく「体験」として受け取れます
  • 大人向けの絵本を探している人:テーマは深く、読み応えは十分
  • 言葉や文化の壁を感じたことがある人:異国での「わからなさ」や孤独が丁寧に描かれており、自分事として読めます
  • 静かに考えさせられる作品を探している人:128ページでじっくり思考できる作品です
  • 子どもに世界の現実を伝えたい親御さん:難しい説明なしに、移民や異文化というテーマを自然に親子で共有できる一冊です

著者について

ショーン・タン(1974年‑)オーストラリア生まれ。オーストラリア児童図書賞をはじめ多数の賞を受賞。邦訳作品に『アライバル』『遠い町から来た話』『レッドツリー』などがある。

作品解説

『アライバル』とは│普遍的な人間の物語

文字なし絵本が描く移民の旅

文字が一切ないのに、ページをめくるたびに胸に何かが届いてくる。ショーン・タンの『アライバル』は、鉛筆によるモノクロの絵だけで、一人の男の異国での生活を静かに描いています。移民・難民問題や異文化への適応、家族との別れと再会を描く。

故郷を離れ、見知らぬ世界へ

ある男が、妻と幼い娘を残して故郷を去ります。理由は明示されませんが、巨大な影のような脅威が迫る故郷から、家族を守るための決断です。手元にあるのはスーツケース一つ。到着した異国は、奇妙な生き物が空を飛び、文字も文化もすべてが異質な世界として描かれています。

言葉が通じない日常

異国に降り立った男は、言葉も文字も持たない「アライバル(新参者/移民)」として一から生活を築いていきます。仕事を探し、住む場所を確保し、見知らぬ人々と少しずつ関係を結んでいく。その過程で出会うのが、同じく故郷を追われた他の「アライバル」たちです。それぞれが異なる苦難の来歴を持ち、言葉を超えた助け合いが生まれていきます。

登場人物に名前はない

本作に登場する人物には、一人も名前がありません。主人公の男、故郷に残る妻と娘、異国で出会う人々。すべてが匿名の存在として描かれています。特定の誰かではなく、あらゆる「アライバル」の象徴として機能するための、作者による意図的な選択です。

『アライバル』の特徴

128ページ、すべて絵だけで語る

本作には本文テキストがまったく存在しません。物語は128ページにわたる鉛筆のモノクロ画のみで進行します。コマ割りはグラフィックノベル的な構成を取りながら、映画的な視点移動や静止画のような見開きを組み合わせ、自然なテンポとリズムを生み出しています。

架空の文字と世界観

異国の看板や書類には、実在しない架空の文字が描かれています。読者は主人公と同じようにその文字を解読できないため、異国の「わからなさ」をそのまま体験することになります。空飛ぶ生き物や巨大建築も含め、世界全体が現実に似た異世界として構築されており、特定の国や文化を指さない普遍的な舞台となっています。

表情と構図が語るもの

セリフも説明もないため、感情はすべて人物の表情・しぐさ・構図で表現されます。別れの場面、孤独の夜、他者との交流。それぞれの場面で絵の密度や余白の使い方が変わり、感情の起伏が自然と伝わってくる構成になっています。

いま大人が読む価値と読むポイント

大人が読む価値

絵本という形式ながら、内容は決して子ども向けではありません。異文化への適応、アイデンティティの喪失と再構築、家族への責任。扱うテーマは深く、読む側の人生経験によって受け取り方が変わります。文字がないぶん、読者自身の解釈や記憶が物語に流れ込む余地が大きく、子どもも読めますが大人ほど重ねるものが多い作品です。

読み方のヒント

本作はゆっくり読むことを前提とした構成です。コマとコマのあいだ、余白、人物の視線の先――細部に意味が込められているため、流し読みでは見落としが生じます。初読では物語の流れをつかみ、再読で細部を拾っていくと、作品の密度をより実感できます。

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関連リンク

書籍詳細ページ

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アライバル Paperback Edition

アライバル Paperback Edition

  • 作者:ショーン・タン
  • 河出書房新社
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『アライバル(ペーパーバック版)』の書籍情報

  • 定価:1,980円(税込)
  • ページ数:128ページ
  • サイズ:17.3 x 1.2 x 23 cm
  • 初版発行:2023年04月19日
  • 対象年齢:3歳〜、大人
  • 出版社:河出書房新社

ハードカバー版

アライバル

アライバル

  • 作者:ショーン・タン
  • 河出書房新社
Amazon

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