「居場所を失った若者たちが集う“監獄校”で、彼らは何を見つけるのか。」
紅葉台高校付属AO専門学校――そこは、特別な事情を抱えた生徒たちが送り込まれる場所。主人公・龍守山吹は、入学早々にトラブルの渦に巻き込まれ、寮にさえ入れず授業からもはみ出してしまいます。そんな過酷な日常の中で、彼は個性豊かな仲間たちと出会い、時に衝突しながらも“下級生”としての厳しい学園生活を歩み始めます。
『未完成サイコロトニクス』は同作者による『あまつき』と同じ世界観を舞台にした、学園SF譚。落ちこぼれが集められた“監獄校”で繰り広げられる青春と成長の物語には、デジタルと現実の境界をめぐる緻密な設定や、魅力あふれるキャラクターたちの人間模様が丁寧に描かれています。
打ち切りながら、随所に伏線や余韻を残す展開は、読者に考察の楽しみを与えると同時に、未回収の要素ゆえの切なさも感じさせます。『あまつき』を知る人には一層深い楽しみを、未読の人にも新鮮な驚きを届けてくれる一冊です。
作品紹介
あらすじ
特別な事情を抱える生徒たちが集められた紅葉台高校付属AO専門学校での物語。入学早々、龍守山吹はトラブル続きで寮にも入れず、授業にも出席できない波乱の学園生活を送ることに。上級生の指導を受けながら卒業を目指す“下級生”としての厳しい日々が始まる。
おもな登場人物
龍守山吹（たつもり・やまぶき）
AO専門学校1年。文明から離れた村で育ち、たくましい生命力を持つ。
兎谷芹里（うさぎだに・せり）
龍守の同級生で寮の隣室。女装癖が原因でトラブルを起こし、AO校に入学。
書籍情報（巻数・出版社・受賞歴）
●巻数表記は、Kindle版や文庫版など、入手しやすい流通形態を基準としています。
こんな人におすすめ
本作は、以下のような方に特におすすめです。
- 『あまつき』が好きな人:同作者による前作と同じ世界観で、ファンサービス的な展開を楽しめます。
- 学園×SFの設定が好きな人:問題児ばかりが集まる“監獄校”というユニークな舞台が魅力です。
- キャラクター重視で読む人:主人公の謎めいた行動や個性豊かな登場人物との関係性が見どころです。
- 伏線や設定を考察するのが好きな人:デジタルと現実のズレをテーマにした緻密な設定が散りばめられています。
- 短い巻数で読める作品を探している人:全4巻完結なので、一気に読みやすいです。
著者について
高山しのぶ。2004年に『かごめの鳥は今どこへ』でデビュー。代表作に『あまつき』や『MR.MORNING』がある。
作品解説
空想科学×学園設定
『あまつき』とつながる世界観
本作は、同作者の前作『あまつき』と同じ世界線に位置する物語です。前作直後の時代を舞台にしており、世界観が自然に地続きとなっています。ただし、『あまつき』を読んでいなくても設定は理解することはできます。
舞台は「落ちこぼれの監獄校」
物語の中心となるのは、問題児ばかりを集めた紅葉台高校付属AO専門学校。デジタルと現実のズレに翻弄される生徒たちが、互いにぶつかり合いながらも成長していきます。特に主人公・龍守山吹は、常に笑顔ながらも中身が読めない存在として描かれ、その行動が物語を引っ張ります。
魅力あるキャラクターと緻密な設定
主人公の“謎”が物語を動かす
龍守山吹は天真爛漫に見えつつも、多くの秘密を抱えています。物語が進むにつれて、その背景が徐々に明かされていき、終盤では意外な真実が判明します。
個性豊かな登場人物たち
同級生や上級生もそれぞれ強い個性を持ち、学園という閉鎖的な空間での関係性が物語を盛り上げます。キャラクター同士のやり取りや衝突は、物語の緊張感を高めています。
打ち切りで失われた“先の物語”
伏線が回収されきらない結末
3巻発売後に打ち切りが決まり、残り1巻で急いで完結させる形になりました。そのため、回収されなかった伏線や描き切れなかったエピソードが残っています。
『あまつき』寄りの終わり方
もともとは単独で楽しめる内容になる予定でしたが、結末は『あまつき』寄りの展開になっています。そのため、未読の方は打ち切り感に加えて物足りなさを感じるかもしれません。結果として『あまつき』読者向けのファンサービス的な締めとなっており、必読ではありませんが先に『あまつき』を読んでおくことがおすすめです。
関連リンク
書籍詳細ページ
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