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『イグアナの娘』感想と考察:母親が娘を愛せなかった理由とは?

イグアナの娘 萩尾望都

イグアナの娘』は、50ページという短編ながらも、母と娘の心の葛藤や親子関係に潜む心理的なテーマを深く掘り下げた作品です。この作品では、母親に愛されない娘が、母親の目にイグアナに見えてしまうという奇妙な設定を通して、親子間のすれ違いや親子の愛情、コンプレックスが描かれています。この記事では、作品のあらすじや登場人物の紹介、さらにこの物語が問いかけるテーマについて詳しく解説していきます。

作品紹介

あらすじ

主人公の青島リカは、母親であるゆりこから「イグアナ」と呼ばれ、愛されることなく育てられました。リカは、自分自身も母親の目に映る「イグアナ」としての自己認識を持ち、母との心の距離を感じながら成長していきます。
母親の愛情を受けられないまま、リカは妹のマミと比較されながら、母の関心がすべて妹に向けられていることに苦しみます。

おもな登場人物

青島リカ

本作の主人公。成績や運動能力も優秀で美しい容姿を持ちながら、母親に愛されないまま育つ。

青島ゆりこ

リカの母親。リカが生まれた時から、彼女の姿が「イグアナ」に見えてしまい、愛することができない。

青島マミ

リカの妹で、母親からは溺愛されています。母の愛情を一身に受けるマミは、リカに対して軽んじる態度を取る。

作者について

萩尾望都は、1969年にデビューし、少女漫画の世界で数々の名作を生み出してきた作家です。『イグアナの娘』は、母娘の複雑な関係を題材にした作品で、萩尾自身の内面や彼女が感じた社会の抑圧が反映されている。萩尾望都は自分の漫画に対する家族の理解が得られなかった経験もあり、こうした体験が「親と子」のテーマに深く影響を与えていることがわかります。

参考サイト:萩尾望都が仏紙に語る「漫画を描いて、母の抑圧からの解放を模索した」

こんな人におすすめ!

  • 親との関係に悩んだことがある人
  • 子どもを持つ親として、親子関係について考えたい人
  • ドラマ版(菅野美穂主演)を見たことがある人
  • 短編でも感情に深く訴えかける物語を読みたい人

作品解説

なぜ母は娘を「イグアナ」として見たのか?

大人になりきれていない母

ゆりこ自身が、自分の親から十分な愛情を受けて育ってこなかったことや、容姿への強いコンプレックスを抱えていたことが、リカとの関係に影響を与えていたと推測できます。そのような理由からリカに対して母親としての愛情を抱くことができず、初めての子どもであるリカを異質な存在として見てしまったのではないかと考えられます。

なぜ「イグアナ」なのか?

ゆりこがリカをイグアナと認識する理由には、彼女自身の内面にある自己否定や劣等感が大きく関わっています。ゆりこは、リカに対して十分な愛情を注げなかったため、リカを「醜い存在」として象徴的にイグアナに例えたのかもしれません。また、それで自分の子を愛せない事を正当化させ、自分の心を守っていたのかも知れません。

母親として社会から受けるプレッシャー

リカが「イグアナ」に見えたもう一つの推測として、リカが生まれた時からすでに「イグアナ」として見えたのは、ゆりこの内面的な葛藤やプレッシャーが影響している可能性があります。母親としての責任に押しつぶされそうになっていたゆりこは、無意識のうちに自分の不安や劣等感をリカに投影し、彼女を異質な存在、つまり「イグアナ」として認識することで、その感情を象徴的に表現してしまったのではないかと考えられます。

ドラマ版

[エッセイ]『イグアナの娘』を通して考える。私が母親になっていたらの「もしも」のシナリオ  

感想エッセイです。こちら(note)から読めます。

まとめ

短編ながらも深い感情のすれ違いや、母と娘の関係性を鋭く描いた作品です。親子の絆や愛情について考えさせられるこの作品は、どんな形であれ、親との関係に悩んだことのある読者にとって心に響く内容となっています。

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